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トッキー
2022.8.26 16:05メディア

NATOの東方拡大はアメリカの「裏切り」か!?

クライテリオンひとり論破祭り、第5回!

第1回 ウソついて逃げるクライテリオン藤井聡!
第2回 ロシアのプロパガンダを「多面的な解釈」と強弁する藤井聡!
第3回 道路交通法と国際法の区別がつかない藤井聡!
第4回 藤井聡の言う「多面的解釈の外交」とは何か?

表現者クライテリオン編集長・藤井聡氏は同誌7月号で、プーチンのウクライナ侵攻を見てまず思い浮かべるべきは「ヒトラー」ではなく「戦前の日本」だと主張。
これをよしりん先生が「小林よしのりライジングVol.440」で、現在のロシアと戦前の日本は全然違うと徹底批判しました。

すると、藤井氏は自身の動画において、「確かに当時の日本と、いまのロシアってのは違うところ当然山ほどあります」と主張を後退させ、同誌での自らの主張は「似てるところはあるということを論じている」だけだと弁明しました。

この弁明自体が卑怯であることは本シリーズの第1回で指摘しましたが、さらに続きがあります。

藤井氏は弁明動画で新たに「違うところは山ほどあるが、似てるところはある」「完全に違うっていうのは違う」と主張したわけですが、その根拠として挙げたのが『表現者クライテリオン』7月号に掲載された伊藤貫氏『三十年間、ロシアを弄んできたアメリカ』という論稿です。

ではそれを読めば、戦前の日本と現在のロシアは似ていると納得できるのでしょうか?
それ、とっくに読んでますが、全然納得できません。

伊藤氏は、現在行われているのは「ロシア・ウクライナ戦争」ではなく「米露戦争」であり、過去30年間、米政府がロシアに対して行ってきた、二つの「裏切り」がもたらしたのだと主張しています。

そして、その「裏切り」のひとつが、米政府が「NATOを拡大しない」という約束を破棄して東方にNATOを拡大させ、ロシア包囲網を強化しようとしたことだと言っています。

しかしこの主張は、ウクライナ人の国際政治学者、グレンコ・アンドリー氏によれば「プーチンの勝手な思い込み」です。
グレンコ氏は『プーチン幻想 「ロシアの正体」と日本の危機』(PHP新書)で、こう書いています。

 

 プーチンにとっては、NATOの東方拡大は「裏切り」行為である。実際にプーチンはこのように発言している。「我々は何度も騙された。我々が知らないところで物事が決定されて、そして我々は既成事実だけを突きつけられた。NATOの東への拡大や、我が国境付近での軍事インフラ整備はまさにこれだ」。
 たとえば二〇〇四年に、NATOに新たな七カ国が加盟した。バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)、 スロバキア、ルーマニア、ブルガリア、スロベニアである。そのとき、プーチンは七カ国の加盟をアメリカのブッシュ 大統領とイギリスのブレア首相による「自分に対する裏切り行為」だと認識した。つまりプーチンの頭の中では、アメリカ一国だけの意思でNATOという条約機構が動き、新しい国を次から次へ加盟させている、ということだ。そして彼は同時に、「NATOは東へ拡大しない」と約束している、と勝手に思い込んでいる。だから裏切り行為という表現が出てくるのだ。
 当然、この認識は完全に間違っている。そもそも「NATOは東へ拡大しない」という約束はどこにも存在しないし、NATOの仕組み上、発生するはずがない。プーチンを始めとするロシアの帝国主義者の妄想にすぎないが、全世界(日本を含む)にいるロシアのファンがその妄想を信じている。

 

NATOには明確な加盟基準と手続きがあり、現加盟国の全会一致がなければ新たな国が加盟することはできません。
実際、先日加盟が決定したフィンランド・スウェーデンの場合も、トルコ一国の反対で実現が難航した場面がありました。
つまり、アメリカ一国の意思でNATOを拡大したり、逆に拡大を阻止したりすることはできず、それをロシア政府に約束することなどあり得ないというわけです。

NATOが拡大したのはアメリカの陰謀でも何でもなく、新加盟国それぞれが自らの意思で加盟を望み、加盟基準を満たして手続きを踏む努力をした結果です。
そして、新加盟国がなぜNATOへの加盟を望んだかといえば、それはロシアの脅威があったからでしょう。
ロシアという国はいつ領土的野心を燃やして侵略してくるかわからないから、NATOに加盟して安全保障を万全にしたいと判断したのでしょう。

今年加盟が決まったフィンランド・スウェーデンを見てもそれは明らかです。
本当はNATOに加盟したかったけれども、地理的にロシアと近すぎるため、ロシアを刺激しないように「中立」の立場を取って、ずっと加盟を見送っていたのです。
ところが、ウクライナが同様にNATOに加盟していなかったにもかかわらず、というより、加盟していなかったからこそ、ロシアに侵略されてしまいました。
だから両国とも大急ぎでNATOに加盟したというわけです。

この経緯を見れば、誰でもわかりますよね?
なぜNATOは東方に拡大したのでしょうか?
次の2つから選びましょう!

1.ロシアを弱体化する陰謀に基づき、アメリカが東欧各国をNATOに加盟させたから。
2.ロシアによる侵略の脅威を感じている東欧各国が、NATOへの加盟を望んだから。

藤井氏は1を選ぶんですね? 私は2を選びますよ。

で、仮に1が正しかったとして、それで、なんで戦前の日本と現在のロシアが似ていることになるんですか?
戦前の支那大陸にNATOみたいな多国間軍事同盟があって、アメリカがそれを利用して満州を勢力圏に入れようとしたんですか?
そんなことがあったなんて、ぜーんぜん知りませんでしたねー。私も少しは歴史を勉強したつもりだったんですけど。

(困ったなー、まだ続くぞ。)

 

トッキー

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